体が弱ると心まで弱くなるのは、どうしてだろう。
熱のせいでうまく働いていない頭で、ぼんやりとそんなことを考えていた。
時計を見ればもう夜の11時を回っている。
近藤さんは、無事に仕事から帰ってきたんだろうか。
ふと、そんなことが頭をよぎった。
「久々にでっかい仕事なんだ。しばらく屯所には帰ってこねー。連絡もあまりできねーと思うが、心配しないで待っててくれ」
そう言って笑った近藤さんを見たのはつい1週間前のことなのに、もうずいぶん昔のことのように感じられた。
いつもなら、こんなに不安になることなんてないのに。
無意識のうちに、私の手は携帯を握りしめていた。
声が聞きたい。
そう思い始めれば、その気持ちは膨らむばかりで、携帯の「近藤さん」の文字を見つめながら指先はダイヤルを押す一歩手前で止まっていた。
だめだ。
まだ仕事中かもしれないのに。
そう思うとどうしてもボタンを押す勇気が出なくて、どうしようもない寂しさが涙と一緒に込み上げてくる。
その時、握りしめていた電話から微かな振動が伝わってきた。
まさか・・・、そう思って見れば、画面には「総悟」の文字。
震える手でボタンを押せば、いつもののんきな声が聞こえてきた。
「よぉー、生きてっか?今仕事終わったから、朝には屯所に帰るぜぃ」
何も聞かなくてもそう言ってくれたのは、いつも私が自分から近藤さんに連絡できずにいるのを知っている彼なりの優しさなのかもしれない。
「うん・・・・、連絡ありがとう」
「泣いてるんですかぃ?」
「ううん・・・ちょっと風邪ひいて」
こんなことを言っても、きっと鋭い彼には気づかれているんだろうな。
そう思っていると、電話の向こうで、すう、と息を吸いこむ音が聞こえた。
「近藤さ〜ん!!大変でさぁ!!あいつが倒れてやばいらしいですぜ!!」
びっくりしている間もなく、ダダダ、と駆けてくる音が聞こえた。
「おい?!大丈夫なのか?!」
必死にそう問いかけてくる彼の声が聞こえて、私はいよいよ涙が抑えられなくなってしまった。
「っ・・・近藤さ・・・」
「待ってろ!!すぐ行くからな!!」
真剣な彼の声が、電話越しに私の部屋に響いた。
待ってるよ・・・
あなたがあんなふうに言ってくれたら、きっと私はいつまででも待っていられる。
「・・・おい、総悟」
「全く、あの二人は遠慮しすぎていけねーや。ねぇ?土方さん」
「待ってろ」確かに恋だったサマより