土方さん、一緒にメシいきませんかぃ?、という総悟の誘いに乗ったのはほんの気まぐれだった。
最近新しくできた定食屋がなかなか美味いんでさぁ、と隣で話すヤツを横目に、さっきまであんなに晴れていた空がみるみる曇っていくのを見て、俺は出かけたことを後悔していた。
店に着くと、総悟の言っていたことはどうやら本当らしく、昼飯には大分遅い時間にも関わらずほぼ満席状態だった。
とりあえず入口で待っていると、一人の店員がすまなさそうに話しかけてきた。
「いらっしゃい、沖田さん。今日はおばちゃんがぎっくり腰で休みでねぇ、厨房が一人だからなかなかうまくまわらないんだわ。もう少し待っててね」
「そうだったんですかぃ。それじゃあ仕方ありませんねぇ」
「お連れの方も、もう少しお待ちくださいね」
「あぁ」
あの店員の口ぶりからして、総悟はすでに常連のようだった。
「ここのおばちゃんが店開いた日、たまたま前を通りかかったら、客寄せになってくれって頼まれてちょっと手伝ったらうまくいきましてね。お礼にってもらった食券がたんまりあるんでさぁ」
「・・・なるほどな。てっきりおごらされんのかと思ってたぜ」
「いやだなぁ、土方さん。俺だって気まぐれであんたのこと誘うことぐらいありますぜぃ?ホントめったにこんなことありませんがね」
「あぁ、そうかよ」
総悟の口ぶりはいつもよりまともで、
まあ、たまにはこういうのも悪くねぇか。なんてガラでもないことを思いながら外を見ると、今にも雨が降り出しそうだった。